ページ

2011/01/17

【参加レポート】 原子力政策円卓会議2010シンポ 「原子力政策をどう見直すか~日英独における今日的論争とその方向性」

エネルギーシフトを考えるデータバンクのブログにレポートしたものを転載します。
http://staff.energy-shift.org/2010/11/405
------------------------------------------------------------

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
(本シンポジウムは地球環境基金の助成を受けて開催されます。)
テーマ:「原子力政策をどう見直すか~日英独における今日的論争とその方向性」
日時:2010年11月23日
時間:13:30~17:00
場所:東京工業大学 本館 第一会議室(4階)
主催:原子力政策円卓会議2010
東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)
特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
参加人数:50~60名
参加費:無料!!
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
■世話人(現在は4名)が企画・運営の責任をもつ
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
澤田哲生(東京工業大学)
長崎晋也(東京大学)
吉岡斉(九州大学)
■理念と目的
・「二項対立」を超え「タブーと建前論」を排し、多様なステークホルダーが
個人として集まり、立場を超えた議論を進めること
・日本の原子力研究開発利用が行き詰っている中で、「二項対立」に陥らず、
「政策課題を共有する」ための対話を進める
■参加者の構成
・原則として、今後少なくとも10年程度にわたって、原子力政策に責任をもって
関与しうる当事者が、個人の立場で参加
・政治家・中央政府官僚・研究者(大学・研究機関)、NPO(環境系・脱原子力系)メンバー
弁護士、会社経営者、地方政治家、地方行政官、シンクタンク研究員、作家、アーティスト、
ジャーナリストなど、約30名がメンバーである。
※女性が少ない。原子力政策に推進の立場で決定権に近いところにいる方がいない
と思っていたら、提言書に以下の説明がありました。
「年齢層は30代から60代まで、男女比は
ほぼ8対2となっている。女性参加者が少ないことは今後解決すべき課題である。
また現時点では以下のような仕事に従事する方々の参加を、まだ得られていない。
ファイナンス専門家、投資家、電気事業者の社員、プラントメーカーの社員、
原子力推進寄りの民間シンクタンクの研究員、外務省系の官僚などである。
さらにメンバーの充実をはかり、その多様性を高めていく必要がある。」
■会議の進め方
・討議を自由闊達にするため、会議や参加者名は非公開、「チャタムハウス・ルール」
・2010年5月から5回の討議を経て、世話人の責任の下で提言書を取りまとめ
・今後も、策定会議と並行して、議論を継続する予定
※覚え書き程度で申し訳ないのですが、以下簡単な議事録です。
■吉岡斉(九州大学副学長)
原子力政策円卓会議2010の提言について
今年9月に提出された「原子力政策大綱(H17.11)の見直しの必要性」
に関する提言書については、こちらをご覧ください。
いままでは原子力大綱の策定会議メンバー構成は
推進32対反対2でバランスがよくない
メンバーの見直し、15対15ぐらいの均等さが必要
策定委員会が頭ごなしに「やります」とするのではなく、しっかりアジェンダを公表すること
■スティーブ・トーマス氏(グリニッジ大学教授)
原発「第3世代プラス」、よりシンプルにより低コストに、より安全なデザイン
新しいデザインに対する関心の高まりが、「原子力ルネッサンス」といわれるようになった。
ただ10年たっても、この新しいデザインに対する注文・発注はそんなにない。
2008年1月以降、32基の建設工事があるが、
そのうち中国21基、ロシア6基、韓国3基、ブラジル1基(1975年発注)、残り1つは日本。
第3世代プラスのデザインの発注はそのうち6つのみ。データを見る限り、
欧米諸国で原発ルネッサンスが起こっているかというと、そうではない。
原発でなにかが起きた場合、保険をする国際条約(ローマ・パリ・ブラッセル条約)がある。
最終的には納税者負担となる。
原子力ルネッサンスはキロワット1000ドルで作れるという約束が出発点だった
しかし過去2~3年のopenな入札をみるとキロワットアワー6000ドルに、10年で6倍に上がっている
1000ドルという設定自体が非現実的なのでは?
銀行は融資した企業が破たんするリスクは負いたくない
誰かが負担して、と思っている
原発リスクの転化先
①消費者(より高い電力コストを払ってもらう)
②補償を行うことで破たんした場合は納税者負担
③原発のベンダー(建設がどのくらいかかったとしても固定価格を保証する)
納税者、原発のベンダーとしてリスクを負う構えはあるか?
ターンキー契約でこれを負担する、というのは有効でない
50年原発建設コストは上昇の一途をたどるのみ
普通のテクノロジーは徐々にコストダウンし、テクノロジー技術自体はアップしていくはず
それが逆を辿っているものを、いったい誰が使うのか
ヨーロッパおよびアメリカはほんのわずかの建設のみ。今後もほとんと建設は行われないでしょう。
■ルッツ・メッツ氏(ベルリン自由大学政治科学部上級准教授)
ニュークリアルネッサンスは起きていない。
IEAの一次エネルギーの割合はここ10年は変化していない。
化石燃料の石油・石炭・天然ガス、トータルの一次エネルギーの75%を占めている。
原子力は6%、最も小さいもの
世界における原子炉の起動と停止
70~80年代に起動が集中
1990年以降は原子炉の停止の方がより大きな意味をもつ
国連加盟国は192か国、うち原子力政策プログラムを有していない国が160か国。
ウランがどこで濃縮・採掘されるのかによっても、CO₂排出量は異なる。
太陽光発電を除くと、その他の再生可能エネルギーはよりクリーン。
バイオガスはマイナス排出量となり、より優れた方法となる。
原子力を今までの通り全体の2.5%を維持していくなら将来の原発からのCO₂排出は
2050年にはガス・火力を上回る。
今と同じ原子力発電所の規模を維持していくなら同じようなことが6年の間に起きます。
IPCCのいうように、15年の間でCO₂の排出を減らしていかなければならないのなら、
原子力では役に立たないのは明らかです。
※ラウンドテーブル討議について、メモをとっていないので、
全体を詳しく見たい方は、Ustreamでご覧いただけますので、
こちらの動画をご覧ください。
【前半】[詳しくはこちら]
【後半】[詳しくはこちら]
■最後に
今日は結論を出す日ではない
これから1年間かけて原子力大綱の見直しを図っていく
それに様々なステークホルダーの意見を盛り込めるように
それと並行して円卓会議を行っていく予定。
対話をすることが大事。
原子力体大綱を見直す原子力委員会は、従来のメンバーより変わってきた
(という意見と外だけ変わってあまり変わってない?という意見と両方)
未来世代のステークホルダーを迎えて、第2フェーズをむかえたい(by 澤田さん)
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
個人的な感想ですが、
「今までにない画期的な対話の場」ときき、
こんがらがっていた複雑な糸を、解きほぐす作業に
入られたのだなぁと思いました。
飯田さんの寛容さとユーモアに感動します。
私は今まで感情で原子力政策を見てしまっていたところがあったので
客観的なデータや統計(受注/発注やコストが下がるどころか上がっている)から
この政策を冷静にみる、という姿勢がとても新鮮でした。
全肯定でもない、全否定でもない、傍観でもない、間のスタンスが大切。
わからなくなっていたものが、わかるようになる。
見えなくなってしまったものが、見えるようになる。
そうして社会の透明度があがっていけたらよいです。
人も社会も成熟していけたらよいです。
せっかく、民主主義の国なのだから。
円卓会議は、もっと楽しくなる気がしました。
知っている人も
知らない人も
どんどん参加したらいい、と思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿